ヤクルトの商品であるヤクルト400とヤクルト400LT。
この2つの商品は免疫力が上がりインフルエンザに効くのではと話題になっています。
乳酸菌製品であるヤクルトがインフルエンザに効くなんてなんだか突拍子もない話だと思われるかもしれません。
果たしてヤクルト400とヤクルト400LTはインフルエンザに効果があるのかを検証し、記事にしました。
Contents
ヤクルト400はインフルエンザに対する効果や免疫力上昇を謳えない
結論から言えばあなたがヤクルト400を飲めばインフルエンザの予防効果を得られると言えます。
しかしヤクルトは「ヤクルト400にはインフルエンザの予防効果があります」と表記して販売することはできません。
なぜならばヤクルト400とヤクルト400LTは特定保健用食品であり、厚生労働省に認可された効果として「おなかの調子を整える」と表記することしかできないからです。
特定保健用食品
実験データに基づいて審査を受け、健康づくりのための食習慣改善のきっかけとして「~が気になる方に」という効能効果を表示することを日本政府から認可された食品。通称「トクホ」「特保」と呼ばれる。健康増進法に基づく特別用途食品に含まれる。
Wikipedia特定保健用食品より引用
もしヤクルトが国の承認なしに効果効能を表記して商品を販売した場合は薬機法違反となります。
しかしヤクルト400が「おなかの調子を整える」以外にも効果があることは研究により明らかになっており、ヤクルトも乳酸菌が何の症状に効果を発揮するのかを検証しサイエンスレポートという形で公表しています。
今回はそのレポートに沿い、ヤクルト400とヤクルト400LTがどのような作用機序で、またどの程度インフルエンザに効果を示すのかを検証していきます。
ヤクルト400に含まれるシロタ株がインフルエンザに効果を示す
ヤクルト400とヤクルト400LTの名前の意味をご存じでしょうか?
「400」という数字はヤクルト1本に「400憶個の乳酸菌が含まれている」という意味をあらわしています。
ヤクルトの乳酸菌の正式名称は「乳酸桿菌ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」で通称「シロタ株」と呼ばれています。
ヤクルト400とヤクルト400LTを摂取すると乳酸菌「シロタ株」が腸に届き、いわゆる「体に良い」効果を発揮する、つまり今回の記事に関しては「シロタ株が免疫力をあげてインフルエンザに効果を示す」ということになります。
ヤクルトの乳酸菌の効果に関しては別途記事を書いていますので参照いただければ幸いです。
ちなみにLTとは「Low calorie Type(ローカロリータイプ)」の意味で、ヤクルト400LTの方がヤクルト400より30%カロリーが低くなっています。
カロリーを気にされる方はヤクルト400よりヤクルト400LTの摂取をおすすめします。
ヤクルト400のインフルエンザに対する効果は?
ではヤクルト400はどのようなメカニズムでインフルエンザ症状を抑制するのでしょうか?
侵入したインフルエンザウイルスをどのように攻撃するのか
体内に侵入したインフルエンザウイルスを攻撃する方法の1つにNK細胞によるものがあります。
体内にインフルエンザウイルスが侵入すると白血球の1つであるマクロファージがNK細胞を活性化させ、NK細胞はウイルスなどに感染した細胞を直接攻撃して破壊します。
ヤクルト400はNK細胞を活性化させて(免疫力を上げて)インフルエンザに効果を示す
この免疫メカニズムのどこに乳酸菌が関与するスキがあるのか・・?
そう思いますよね?
ヤクルトの研究によれば免疫における乳酸菌シロタ株(ヤクルト400)の役割はNK細胞の活性化です。
ヤクルトは次のような実験によりヤクルト400がNK細胞を活性していることを実証しました。
被験者:NK活性が低い18人
被験者を次の2つのグループにわける
- ヤクルト400を3週間飲用してもらう
- シロタ株が含まれていない飲料(プラセボ)を3週間飲用してもらう
両グループのNK活性を比較する
要は免疫が弱い人にヤクルト400を3週間飲んでもらったら、免疫力はついたのかを検証したわけですね。
その結果が次のグラフです。
ヤクルトサイエンスレポートNo3より引用
シロタ株が含まれていない飲料(プラセボ)を摂取したグループのNK活性は調査期間中あまり変化が見られません。
一方ヤクルト400を飲用したグループは、飲用する前と比べて最大15%程度NK細胞が活性していることがわかります。
つまりヤクルト400を摂取したグループの免疫力が上がったわけです。
NK細胞の活性は風邪と因果関係がはっきりしており、ヤクルト400の摂取によりNK活性が上昇していることから、ヤクルト400は風邪の予防(インフルエンザウイルス含む)に効果があると言えます。
ヤクルト400が免疫力を上げてインフルエンザに効果を示すメカニズム
ではなぜヤクルト400はNK細胞を活性化させ、免疫力を上げるのでしょうか?
ヤクルトの研究によればヤクルト400に含まれるシロタ株を取り組んだマクロファージは活性化し、NK細胞を活性化させるサイトカインIL-12の生産量を増加させることが要因であると推測されています。
ヤクルトサイエンスレポートNo3より引用
ヤクルト400の長期服用はインフルエンザ症状を緩和した
またヤクルトではデイケア施設に通う在宅高齢者にシロタ株飲料を5か月間摂取してもらう研究を行っています。
研究の概要は次の通りです。
被験者:デイケア施設に通う高齢者154名
- 被験者を次の2つのグループにわける
- ヤクルト400(シロタ株400憶個)を飲用するグループ
- シロタ株を含まない疑似飲料(プラセボ)を飲用するグループ
それぞれ飲料を1日1本、5か月間飲んでもらいインフルエンザを含む上気道感染症の発症に対する影響を調べる。
要は高齢者(免疫力が弱いと考えられます)にヤクルト400を5か月間飲んでもらうと、インフルエンザを含むのど風邪は予防できたのか?ということを調べたわけです。
研究の結果は次の表の通りです。
シロタ株飲料飲用群とプラセボ飲用群の間で、上気道感染症の発症者数と症状スコア(症状の重篤度)を足したものについては両者に大きな差異はみられませんでした。
しかし平均有病日数についてはシロタ株飲料の場合は3.71日、プラセボ飲料飲用群の場合は5.40日と有意に有病日数の短縮が見られたのです。
このことからデイケア施設に通う高齢者に対する実験ではヤクルト400が、上気道感染症(インフルエンザ)の感染期間を短縮することが示唆されています。
【結論】ヤクルト400は免疫力を上げてインフルエンザに効果を示すのか?
これまで書いてきたことをまとめてみましょう。
- ヤクルト400に含まれるシロタ株はNK細胞を活性化する(免疫力を上げる)。
- NK細胞はインフルエンザを含む感染症を予防する
- 高齢者を対象とした研究では上気道感染症の有病日数を短縮させた
以上のことより、ヤクルト400は免疫力を上げてインフルエンザを予防すると考えられます。
乳酸菌が風邪を予防するなんて考えられないと思うかもしれません。
しかし近年、腸内細菌と人間の健康には大きな関係があることがわかってきています。
2015年にはNHKスペシャルで腸内フローラに関する番組が放送され、大きな反響を呼びました。
その放送が書籍化されたものが販売されています。
腸内フローラと健康についてもっと知りたい方は読んで損はしません。
ヤクルト400を効果的に摂取するには?
以上のように素晴らしい効果を持ったヤクルト400ですが、効果的に摂取するにはどうすれば良いのかをお伝えします。
ヤクルト400を飲む時間はいつでも良い
一般的に乳酸菌を含む食品は食後に服用することを推奨されています。
さらに、その効果を十分に発揮させるには、とるタイミングが重要だ。「乳酸菌や、特にビフィズス菌は、胃酸に弱い。だから、胃酸が薄まり影響を受けにくい食後にとるとよい」と齋藤教授はアドバイスする。
ヘルスアップ健康づくりより引用
しかし私がシロタ株を含む乳酸菌飲料の摂取時間についてヤクルトに問い合わせすると次のような返信がありました。
乳酸菌 シロタ株は、強い殺菌力がある胃液、胆汁などに負けずに生きて腸にとどくよう、強化培養していますので、食後に飲む必要はございません。
毎日続けていただきたい商品ですので、飲み忘れのないよう、続けやすいタイミングにお飲みいただければと存じます。ヤクルトお客様センターのメールより引用
乳酸菌シロタ株は酸に強いため食後ではなくても問題はなく、それよりも「食べ忘れないよう毎日摂取することが重要」ということですね。
ヤクルト400は難消化性オリゴ糖と一緒に食べると効果的
あなたがヤクルト400をより効果的に食べたいのであればオリゴ糖などと一緒に摂取することをお勧めします。
根拠としては次のとおりです。
また、辨野氏は「乳酸菌やビフィズス菌だけをとるよりも、それらの『エサ』となる食物繊維やオリゴ糖もたっぷりとるのが効果的。
ヘルスアップ健康づくりより引用
「オリゴ糖をとる」とありますが、正確には難消化性オリゴ糖です。
難消化性オリゴ糖はヒトに有益な細菌(乳酸菌)の増殖を促進させる効果があります。
宿主(人間)にとって有益な菌(乳酸菌)のことををプロバイオティクスと言いますが、有益な菌を増やす食品をプレバイオティクスと呼びます。
プレバイオティクスは大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分と定義した。
腸内細菌学会より引用
つまりヤクルト400はプロバイオティクス、難消化性オリゴ糖はプレバイオティクスです。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時摂取することをシンバイオティクスと言いその効果は臨床現場でも用いられています。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせて応用する試みは、上記シンバイオティクスの概念が提唱される前から行われており、臨床現場においてはシンバイオティクス療法として病態者や術後における感染防御、炎症抑制などにおいて効果を示しており、健康食品においては両者を組み合わせたヨーグルトなども販売されている。
腸内細菌学会より引用
私がヨーグルトと一緒に摂取しているのはガラクトオリゴ糖で、摂取目安は大人の場合1日4.5gです。
値段は1,600円(2019年12月現在)程度、1日たったの14.4円です。
ヤクルト400と抗生物質の併用は避けたほうが良い
また薬剤師としてあなたが抗生物質を服用している場合、ヤクルト400は抗生物質服用から2時間以上あけて摂取してください。
乳酸菌は抗生物質によって死滅してしまうからです。
ヤクルト400のその他の効果
ヤクルト400にはインフルエンザ以外にも効果があることが研究により明らかになっています。別途記事を書いていますので参照をお願いします。
記事⇒⇒ヤクルト400には花粉症やアレルギー性鼻炎を抑制する効果がある