ヤクルトの商品であるヤクルト400とヤクルト400LT。
この2つの商品は花粉症やアレルギー性鼻炎に効くのではないかということが話題になっています。
乳酸菌製品であるヤクルトが花粉症とアレルギー性鼻炎に効くなんてなんだか突拍子もない話だと思われるかもしれません。
果たしてヤクルト400とヤクルト400LTは花粉症やアレルギー性鼻炎に効果があるのかを検証し記事にしました。
Contents
ヤクルト400は花粉症・アレルギー性鼻炎に対する効果を謳えない
ヤクルト400とヤクルト400LTは特定保健用食品であり、厚生労働省に認可された効果として「おなかの調子を整える」ということしか謳うことができません。
しかし乳酸菌が我々の健康に様々な影響を与えることがわかってきており、ヤクルトでも乳酸菌が何の症状に効果を発揮するのかを検証しHP内で公表しています。
この記事ではヤクルト400とヤクルト400LTが花粉症に効果があるのか、効果があるのならどのような作用機序で効果が発現するのかを検証していきます。
ヤクルト400が花粉症・アレルギー性鼻炎に関与する
ヤクルト400には400憶個の乳酸菌が含有されており、ヤクルト400に入っている乳酸菌は「シロタ株」と呼ばれています。
花粉症やアレルギー性鼻炎にヤクルト400とヤクルト400LTが影響を与えるのは、この「シロタ株」の効果なのです。
ヤクルトの乳酸菌「シロタ株」に関しては別途記事にしていますので参照いただければ幸いです。
ちなみにLTとは「Low calorie Type(ローカロリータイプ)」の意味で、ヤクルト400LTの方がヤクルト400より30%カロリーが低くなっています。
ヤクルト400の花粉症・アレルギー性鼻炎に対する研究
結論を言えばあなたがヤクルト400やヤクルト400LTを摂取すれば花粉症・アレルギー性鼻炎症状を抑制することができます。
ではヤクルト400がどのようなメカニズムで花粉症・アレルギー性鼻炎症状を抑制するのでしょうか?
ヤクルト400は花粉症・アレルギー性鼻炎のメカニズムに関係するのか?
花粉症・アレルギー性鼻炎は免疫の過剰反応によって起こります。
そのメカニズムは次のとおりです。
花粉症とは、鼻腔内に入ってきたスギ等の植物の花粉に対する免疫反応によって鼻水等の症状が引き起こされることをいい、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。メカニズムとしては、アレルゲンが鼻腔内の粘膜に付着すると、体内に抗体が作られマスト細胞という細胞に結合します。その後再びアレルゲンが侵入すると、マスト細胞からアレルギー誘発物質が放出されることにより鼻水等のアレルギー反応が引き起こされます。
エスエス製薬HPより引用
花粉症とありますがアレルギー性鼻炎もメカニズムは同じです。
アレルゲンに対する抗体を過剰生産してしまう症状が、アレルギーと呼ばれる症状で、花粉症・アレルギー性鼻炎の際放出される抗体をIgE抗体と言います。
こう聞くとますますヤクルト400とヤクルト400LTは花粉症とは何の関係もないように思われますね。
ちょっとIgE抗体という単語だけ覚えておいてくださいね。
ヤクルト400がマウスの花粉症・アレルギー性鼻炎を抑えるメカニズム
ここからはなぜ乳酸菌なんか(笑)が、花粉症やアレルギー性鼻炎に効果を発揮するのかを説明します。
マウスを使用した実験によると、ヤクルト400とヤクルト400LTに含まれる乳酸菌「シロタ株」はIgE抗体の生産量を抑制する効果があったのです。
そしてその抑制効果はシロタ株の摂取量を増やすにつれ強くなり、同時に他の乳酸菌(L.ジョンソニー)よりもその効果は遥かに大きいものだったのです。
ヤクルトサイエンスレポートNO5より引用
次の図はヤクルト400(乳酸菌シロタ株)をあらかじめマウスに投与しておいた場合、アレルギー症状がどの程度発症したかを示す図です。
ヤクルトサイエンスレポートNO5より引用
ご覧の通り、アレルゲンをマウスに与えたときに発現するアレルギー症状が明らかに軽減しています。
このことからマウスに対する実験において、ヤクルト400はアレルギーの原因となるIgE抗体の産生を抑制し花粉症・アレルギー性鼻炎症状を緩和しているのではないかと考えられます。
ヤクルト400がヒトの花粉症・アレルギー性鼻炎症状を緩和させるメカニズム(日本)
ここからはあなたがヤクルト400を飲めば、花粉症やアレルギー性鼻炎症状がどの程度改善されるかを説明していきます。
マウスに対する実験ではIgE抗体の放出抑制によるアレルギー症状軽減の効果が見られましたが、ヤクルト400の人に対する実験ではどうだったのでしょうか?
ヤクルトの研究は次のような手順で行われました。
被験者:スギ花粉症被験者109人
被験者を次のグループにわける
- 乳酸菌シロタ乳飲料(400憶個/本、要はヤクルト400)を飲むグループ
- 乳酸菌シロタ株を含まないプラセボを飲むグループ
それぞれ対象飲料を1日1本、8週間摂取し続ける
要は花粉症患者に毎日ヤクルト400(400LT)を8週間服用してもらったわけですね。
花粉が飛散する時期に行われたこの実験では、花粉飛散と共に両グループに花粉症症状の悪化が見られました。
しかしスギ花粉症中等症状以上の被験者において、ヤクルト400を飲用したグループはシロタ株を飲用していないグループと比較して1週間以上の花粉症発症遅延が認められたのです(下の図参照)。
ヤクルトサイエンスレポートNO5より引用
上画像の「スコア」というのは花粉症症状の強さを表すものです。
ヤクルト400がピーク時の症状を和らげているとは言えませんが、花粉症症状のピークが後ろ倒しになっていることがわかります。
ヤクルト400がヒトの花粉症・アレルギー性鼻炎症状を緩和させるメカニズム(海外)
このように日本で行われたin vivo(生体内)の実験において、ヤクルト400とヤクルト400LTに含まれている「乳酸菌シロタ株」はマウスに対してはIgE抗体の減少による花粉症症状緩和、人に対しては花粉症発症のピーク遅延という効果が明らかになりました。
ヤクルトでは同様の実験を海外でも行い、その検証結果を公表しています。
被験者:18歳~45歳のイネ科花粉症の20名
被験者を次の2つのグループにわける
- 乳酸菌シロタ乳飲料(65憶個/本)を飲むグループ
- 乳酸菌シロタ株を含まないプラセボを飲むグループ
それぞれ対象飲料を1日1本、5か月間摂取し続け血液検査を行う
結果は次の通りです。
ヤクルトサイエンスレポートNO5より引用
IL-5,IL-6はIgE抗体生産を促進させる物質で、その生産量が低下し、結果として初期花粉においてはIgE抗体の生産が抑制されていることがわかります。
つまりヤクルト400とヤクルト400LTに含有されるシロタ株は、花粉シーズン前期においてIgE抗体およびIgE抗体の生産を促進させる体内物質であるIL-5,IL-6生産量の低下させ、花粉症症状を緩和していたのではないかと推測されます。
【結論】ヤクルト400とヤクルト400LTは花粉症・アレルギー性鼻炎に効果があるのか?
ここまでの話をまとめると次のようになります。
- マウスに対する実験では、花粉症の原因となるIgE抗体の生産を抑制し、花粉症症状を緩和した
- 日本での人に対する実験では、花粉症症状のピークを1週間遅らせた
- 海外での人に対する実験では、花粉症症状の原因となるIL-5,6,IgE抗体の生産量を抑制した
このような結果からヤクルト400は花粉症のメカニズムに対して何らかの影響を与え、花粉症やアレルギー性鼻炎の症状を改善する可能性が高いことがわかります。
ヤクルトのHPでは「今後の研究に期待がかかる」という文言で研究結果報告を〆ています。
近年、腸内細菌と人間の健康には大きな関係があることがわかってきています。
2015年にはNHKスペシャルで腸内フローラに関する番組が放送され、大きな反響を呼びました。
その放送が書籍化されたものが販売されています。
腸内フローラと健康についてもっと知りたい方は読んで損はしません。
ヤクルト400を効果的に摂取するには?
以上のように素晴らしい効果を持ったヤクルト400ですが、効果的に摂取するにはどうすれば良いのかをお伝えします。
ヤクルト400を飲む時間はいつでも良い
一般的に乳酸菌を含む食品は食後に服用することを推奨されています。
さらに、その効果を十分に発揮させるには、とるタイミングが重要だ。「乳酸菌や、特にビフィズス菌は、胃酸に弱い。だから、胃酸が薄まり影響を受けにくい食後にとるとよい」と齋藤教授はアドバイスする。
ヘルスアップ健康づくりより引用
しかし私がシロタ株を含む乳酸菌飲料の摂取時間についてヤクルトに問い合わせすると次のような返信がありました。
乳酸菌 シロタ株は、強い殺菌力がある胃液、胆汁などに負けずに生きて腸にとどくよう、強化培養していますので、食後に飲む必要はございません。
毎日続けていただきたい商品ですので、飲み忘れのないよう、続けやすいタイミングにお飲みいただければと存じます。ヤクルトお客様センターのメールより引用
乳酸菌シロタ株は酸に強いため食後ではなくても問題はなく、それよりも「食べ忘れないよう毎日摂取することが重要」ということですね。
ヤクルト400は難消化性オリゴ糖と一緒に食べると効果的
あなたがヤクルト400をより効果的に食べたいのであればオリゴ糖などと一緒に摂取することをお勧めします。
根拠としては次のとおりです。
また、辨野氏は「乳酸菌やビフィズス菌だけをとるよりも、それらの『エサ』となる食物繊維やオリゴ糖もたっぷりとるのが効果的。
ヘルスアップ健康づくりより引用
「オリゴ糖をとる」とありますが、正確には難消化性オリゴ糖です。
難消化性オリゴ糖はヒトに有益な細菌(乳酸菌)の増殖を促進させる効果があります。
宿主(人間)にとって有益な菌(乳酸菌)のことををプロバイオティクスと言いますが、有益な菌を増やす食品をプレバイオティクスと呼びます。
プレバイオティクスは大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分と定義した。
腸内細菌学会より引用
つまりヤクルト400はプロバイオティクス、難消化性オリゴ糖はプレバイオティクスです。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時摂取することをシンバイオティクスと言いその効果は臨床現場でも用いられています。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせて応用する試みは、上記シンバイオティクスの概念が提唱される前から行われており、臨床現場においてはシンバイオティクス療法として病態者や術後における感染防御、炎症抑制などにおいて効果を示しており、健康食品においては両者を組み合わせたヨーグルトなども販売されている。
腸内細菌学会より引用
私がヨーグルトと一緒に摂取しているのはガラクトオリゴ糖で、摂取目安は大人の場合1日4.5gです。
値段は1,600円(2019年12月現在)程度、1日たったの14.4円です。
本気でヤクルト400の効果を引き出したいのであれば併用しない理由はありません。
ヤクルト400は抗生物質との併用は避けるべき
また薬剤師としてあなたが抗生物質を服用している場合、ヤクルト400は抗生物質服用から2時間以上あけて摂取してください。
乳酸菌は抗生物質によって死滅してしまうからです。
ヤクルト400のその他の効果
ヤクルト400は研究により花粉症以外にも効果があることが明らかになっています。
別途記事にしていますので参照をお願いします。