収入の種類によって、所得税と住民税を計算する方法が2種類あることを皆さんはご存知でしょうか?
タイトルにもある通り、申告分離課税と総合課税の2種類があります。
サラリーマンの方は、収入の経路は通常1つだけで、給与所得のみです。
個人事業主・フリーランスの方も同様に1つだけで、事業収入のみの場合が多いでしょう。
しかしながら、収入口が1つだけとは限りません。
株やFX、不動産投資などで副収入を得ている方もいらっしゃいます。
そういった方の場合、収入経路によっては税金を計算する方法が異なる場合があります。今回はその2つの税金の計算方法である、申告分離課税と総合課税について解説をしていきます。
総合課税制度についての解説
総合課税制度とは、各種の収入を全て合算して、所得税と住民税を計算するというものです。
どのような収入が総合課税の対象となるのでしょうか?
ここは国税庁のHPから総合課税制度を抜粋してみましょう。
(1) 利子所得(源泉分離課税とされるもの及び平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等を除く。)
(2) 配当所得(源泉分離課税とされるもの、確定申告をしないことを選択したもの及び、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当について、申告分離課税を選択したものを除く。)
(3) 不動産所得
(4) 事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く。)
(5) 給与所得
(6) 譲渡所得(土地・建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く。)
(7) 一時所得(源泉分離課税とされるものを除く。)
(8) 雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く。)
(注) 上記(4)、(6)及び(8)に係る所得の計算において、一定の先物取引による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、他の所得と区分して申告分離課税の方法により所得税が課されます。
以上の8点です。個別に説明していきますね。
利子所得・・・思い浮かぶのは預金の金利でしょう。しかしながら、預金の金利は受け取った段階で既に税金が引かれています。上記の引用にもありますが「源泉分離課税」されているわけです。また、特定公社債(国債、地方債、公募公社債など)も総合課税ではなく申告分離課税(後述)となっています。では、総合課税に該当する利子所得は何か・・?
海外の預金利子などがこれに該当します。海外に口座をお持ちで利子を受け取られる方は、受け取り時に課税されませんので、総合課税扱いとなり確定申告が必要となります。
配当所得・・・株式の配当金がこれに該当します。しかしながら、租税特別措置法の規定で株式の配当金は源泉徴収されているため、殆どの人は総合課税にはならず「源泉分離課税」されています(証券口座を開いた段階で、源泉分離課税を選択している人が殆どです)。総合課税とするためには、配当所得を源泉徴収されないよう、証券会社や銀行の口座で設定を変更(もしくは証券口座を開いた段階で設定)する必要があります。
不動産所得・・・不動産を購入して、賃料を得ている場合が該当します。いわゆる不動産等を行っている場合ですね。
事業所得・・・事業を営んでそこから所得がある場合は事業所得となります。主に個人事業主が該当すると思われますが、昨今はサラリーマンが副業を営み、事業所得があることもあります。
給与所得・・・会社に勤めて給料を得ている場合です。
譲渡所得・・・土地、建物、株式等、ゴルフ会員権、金地銀などの資産を譲渡することによって生ずる所得を譲渡所得と言いますが、そのうち土地・建物・株式等以外の資産を譲渡した場合は総合課税となります。
一時所得・・・突発的な収益によるものです。例をあげると、懸賞の賞金・競馬で中てた・生命保険の一時金などがこれに該当します。
雑所得・・・上記以外のその他の所得です。例えば公的年金、原稿料、講演料など。最近だとビットコイン等の仮想通貨収益がこれに当たります。
総合課税の計算はどのようにされているのか
総合課税で計算される収入経路を説明してきました。
では、実際に2つ以上の収入があり、どちらの収入も総合課税で計算される場合はどのような計算がなされるのでしょうか?
軽く説明してみます。
例えばサラリーマンが給与所得の他に不動産を所有しており、賃料を稼いでいる方がいるとします。
控除後の課税所得が、給与所得300万円・不動産所得200万円の場合、合算で500万円の課税所得があるとみなされます。
給与所得の場合だけだと、所得税率は10%ですが、課税所得が330万円を超えると所得税率は20%になります。
日本は累進課税制度ですので、課税所得300万円よりも課税所得500万円の方が、より高い税率を課されることになります。
このような計算をするため、一般的に総合課税は税制上不利になってしまいます。
申告分離課税制度について解説
基本的に税金(所得税と住民税)は、収入経路が複数あってもそれらを合算して税金を計算する、総合課税が原則となっています。
しかし所得の中には、それぞれの所得ごとに税金を計算するものもあります。
この制度を申告分離課税制度と言うのです。
申告分離制度の対象となるのは国税庁のHPから抜粋すると以下のものがあります
それぞれ簡単に説明します。
山林所得・・・山林を伐採して譲渡または立木のままで譲渡することによって生ずる所得
土地・建物等の譲渡による譲渡所得・・・土地や建物を譲渡することによって生ずる所得
株式等の譲渡所得等、平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等に係る利子所得及び一定の先物取引による雑所得等・・・長いのでそれぞれわけて解説していきます。
株式等の譲渡所得等とは、株式や投資信託の売買によって得た所得のことです。多くの方は証券口座を解説した時に、税金の支払い方法として特定口座の源泉徴収ありを選択されていることと思います(確定申告が必要ないため)。申告分離課税で支払う場合は、証券口座の設定を申告分離課税に設定しておかなければなりません。
平成28年1月1日以降に支払いを受けるべき特定公社債の利子等に係る利子所得とは、特定公社債(国債、地方債、公募公社債など)の利子のことです。こちらも源泉徴収されることが殆どです。ので分離課税で税金を納めることはあまりありません。
一定の先物取引とは、有名なところだとFX,CFD,クリック株365などがあてはまります。これらは源泉徴収ができませんので確定申告が必要となります。
申告分離課税
申告分離課税の場合、総合課税とは異なった方法で税金の計算が行われます。
例えば、山林所得の場合、以下のような計算式で所得税が計算されます。
(課税山林所得金額×1/5×税率)×5
1/5に5を掛けるので、計算すると(課税山林所得金額×税率)となり、意味が無いような気がします。
しかし実際は、課税山林所得金額の大小によって税率が上下するため、1/5をかけることによってぜ税率が下がります。
税率が下げられた状態で5を掛けるため、所得税額は下がります。
これは山林を育てるのに少なくとも5年はかかるため、単年だけで利益をあげたのではなく、5年かけて得た利益を5等分するためにこのような計算式が採用されています。
ですので、山林を取得して5年以内に伐採または譲渡した場合は事業所得もしくは雑所得となり総合課税の対象となります。
このように、分離課税は総合課税と異なり特殊な税金の計算を行うことが合理的である収入に対してそれぞれ個別に税金の計算が行われます。
総合課税制度と申告分離課税制度のうち、通算損益可能な所得
さて、総合課税と分離課税ですが、不条理なことに赤字が出ている時に利益を相殺できる所得の種類が限られています。次の4種類です。
- 不動産所得(借入金利子部分以外)
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得(土地・建物・株式を除く)
覚え方としては、富士山上(ふじさんじょう)などと言われていますが、こちらの4種を除く所得は例え赤字が出ていたとしても他の所得と合算することができません。
総合課税制度と申告分離課税制度のまとめ
総合課税制度と申告課税制度を簡単にまとめたいと思います。
所得は以下の10種類に分類ができます。
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 不動産所得
- 利子所得
- 配当所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
税金は総合課税が原則で、全ての収入を合算させて所得税と住民税が計算されます。
しかしながら、総合課税とは分離させて計算する必要のある所得もあり、それは
- 山林所得
- 譲渡所得のうち、土地/建物/株式
- 雑所得のうち、株式等の譲渡所得等、平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等に係る利子所得及び一定の先物取引
の3つがあります。