ふるさと納税は年末になると「あと1品目、納税をした方が良いのかどうかわからない、上限超えちゃうかも?」と、上限ギリギリを狙った戦いが繰り広げられてしまいます。
ある意味これもふるさと納税の醍醐味?なのかもしれませんが、可能ならばキッチリと上限を計算して戦略的に納税していきたいもの。
そのご要望にお応えできるよう、ふるさと納税の詳細な計算方法を書いていきたいと思います。
Contents
ふるさと納税上限額の正確な計算式
詳しい説明は要らない、私は限度額だけ知りたいんだ、結論だけ聞かせて欲しい!という人のために計算式だけ先にお伝えしておきます。
となります。
さあどうでしょう?これだけ聞いて分かる人は分かる、分からない人は分からない。多分分からない人がほとんどなのではないでしょうか?
面倒だから、簡易計算表の概算金額で良いや、となってしまいますね。
ふるさと納税上限額の正確な計算式の説明
多分ご自分の「住民税所得割額」「所得税率」が分からないよ!という人が多いと思いますが、先にこの式がどこから出てきたのか、説明させていただきます。(※ここでは確定申告をする場合の計算方法を書いています。結果的に、寄付上限額はワンストップ特例でも変わりません。ワンストップ特例での計算方法は、この記事の最後にあります)
ふるさと納税の上限は3つの要素から成り立っています。
- 所得税からの控除
- 住民税基本分からの控除
- 住民税特例分の控除
それぞれの合計金額が、ふるさと納税をした時の控除金額となります。1から説明していきますね。
①所得税からの控除は
(寄付金額-2000円)×所得税率 (上限は総所得の40%)
②住民税基本分からの控除は
(寄付金額-2000円)×0.1(住民税所得割の税率)(上限は総所得の30%)
③住民税特例分の控除は
(寄付金額-2000円) × (100%-10%-所得税率) (上限は住民税所得割額の20%)
上記1~3のうち、まず上限に達するのは③の住民税特例分の控除になります。
それを考慮し、①~③を合算させたのが最初に出てきた式
になります。(1.021を掛けるのは復興所得税を計算しています)
これを聞いても何を言っているのかわからない?そうでしょうとも。ふるさと納税の限度額を詳細に計算するのはとても難しいのです。
ふるさと納税上限額の計算に必要な「住民税所得割額と所得税率」の求め方
そもそも、詳細な計算をするには住民税所得割額と所得税率がわからなければなりません。
住民税と所得税については、それぞれ次の記事で解説をしていますのでご参照ください。
時間のある方は日本の税制度のことも理解できますので読んでいただけると嬉しいです。
とはいえ、この記事を読まれている方は年末の繁忙期で、一刻も早くふるさと納税の限度額を知りたいと思われているかもしれませんので、ポイントだけ抑えて説明していきますね。
住民税所得割額
というわけで、まずは住民税所得割額の調べ方から
住民税所得割額=課税所得×0.1です。
課税所得に住民税率10%(正確にはお住まいの地域によってわずかに異なる場合があります)を掛けたもの、それが住民税所得割額です。
となると、次に課税所得を調べないといけない。
個人事業主・フリーランスの方は課税所得は、確定申告書Bの27に記載されている数字になります。
計算式で言えば、売上ー経費ー各種控除 が課税所得になります。
会社員・サラリーマンの方は源泉徴収票が手元にあればわかりやすいです。
給与所得の源泉徴収票の、給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計額を引いたものになります。
計算式で言えば、給与ー給与所得控除ー所得控除=課税所得になります
それぞれ調べていただいた課税所得に10%を掛けたもの、それが住民税所得割額となります。
所得税率
次は自分の所得税率を調べなければOKですね。
先ほど住民税所得割額のことろで課税所得を調べていただきましたが、課税所得がわかれば簡単です。
なぜなら所得税率は課税所得によって決まるからです。
課税所得がわかってしまえば、次の表に当てはめるだけです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、課税所得が300万円だった方は、195万を超え330万円以下 の部分を見ていただければ、自分の税率が10%であることがわかりますね。
これで
が埋まりますね。
ふるさと納税上限額の正確な計算を詳しく解説
計算式に当てはめるだけではなく、さらに深く理解したいという人のために補足説明をしておきますね。
①所得税からの控除(寄付金額-2000円)×所得税率(上限は総所得の40%)
所得税の決まり方の式は
サラリーマン・会社員なら
(給与ー給与所得控除ー所得控除)×所得税率 =所得税
フリーランス・個人事業主なら
(売上ー経費ー各種控除)×所得税率=所得税
となりますが、寄付した額はサラリーマン・会社員の場合だと所得控除に該当し、フリーランス・個人事業主の場合だと各種控除にあたります。つまり、寄付した額の分だけ所得税率が掛る本体分から引かれますので、結果として(寄付した額-2000円)×所得税率 分だけ税金が安くなるのです。
そして、控除される金額の上限は総所得の40%までとなります。
②住民税基本分からの控除(寄付金額-2000円)×0.1(住民税所得割の税率) (上限は総所得の30%)
こちらも所得税と同様に、
サラリーマン・会社員なら
(給与ー給与所得控除ー所得控除) × 住民税率 = 住民税
フリーランス・個人事業主なら
(売上ー経費ー各種控除)×住民税率 =住民税
となり、寄付した額はサラリーマン・会社員の場合だと所得控除のとろこに該当、フリーランス・個人事業主の場合だと各種控除にあたります。
つまり、(寄付した額-2000円)×住民税所得割(10%) 分だけ税金が安くなる仕組みとなっており、その上限は総所得の30%までとなります。
③住民税特例分の控除(寄付金額-2000円)×(100%-10%-所得税率)(上限は住民税所得割額の20%)
こちらの控除は①②とは計算方法が異なります。
サラリーマン・会社員の住民税の式
(給与ー給与所得控除ー所得控除) × 住民税率 = 住民税
フリーランス・個人事業主の住民税の式
(売上ー経費ー各種控除)×住民税率 =住民税
で決定された住民税から(寄付金額-2000円)×(100%-10%-所得税率)分だけダイレクトに引かれます(所得控除、各種控除で引かれるのではありません)
これは何を意味するのかと言うと、控除額が総額で(寄付額-2,000円)となるための調整式なのです。・・・具体的に計算してみた方が早そうですね。
5万円分寄付した時の控除額を具体的に計算
ふるさと納税に5万円分の寄付をしたとしましょう。便宜上、納税者の所得税率は10%にしておきますね。
そして①②③それぞれ計算してみましょう。
①所得税からの控除は、(寄付金額-2,000円)×所得税率 (上限は総所得の40%)ですので、
(50,000-2,000)×0.1=4,800円
②住民税基本分からの控除は (寄付金額-2,000円)×0.1(住民税所得割の税率) (上限は総所得の30%) ですので、
(50,000-2,000)×0.1=4800円
③住民税特例分の控除は(寄付金額-2000円)× (100%-10%-所得税率) (上限は住民税所得割額の20%) ですので、
(50,000-2,000)×(100%-10%-10%)= 48,000 × 0.8 = 38,400円
さあ、①②③を足してみましょう!
4,800+4,800+38,400=48,000円
なんと!5万円から2,000円を引いた額になりましたね!
つまり③の式は、①②の控除額と合算させた時に、総額で(寄付額ー2,000円)が控除されるための式だったのですね。
ワンストップ特例申請の場合のふるさと納税上限額の計算式と相違点
確定申告不要のワンストップ特例を利用した場合、その詳細な計算式は少し異なりますので補足事項として記述しておきます。
①住民税基本分からの控除は
(寄付金額-2000円)×0.1(住民税所得割の税率) (上限は総所得の30%)
②住民税特例分の控除は
(寄付金額-2000円) × (100%-10%-所得税率) (上限は住民税所得割額の20%)
③住民税申告特例分の控除は
(②で計算した住民税特例分の控除)× 所得税率÷(100%-10%-所得税率)
何が違うのか・・?
所得税から控除される分が、住民税に置き換わっていますね。
しかしながら、途中の計算式は省きますが、5万円分寄付した時の控除額は48,000円となり先ほどの計算結果と変わりはありません。また、寄付上限額も
の式に変わりはありません。
唯一異なるのは、寄付上限を超えて寄付してしまった場合、ワンストップ特例を利用すると所得税が戻ってこないため損をしてしまう場合がある。
ということだけです。
寄付上限を超える寄付をされる方はほとんどいないと思いますので、あまり有益な情報ではありませんが、確定申告とワンストップ特例ではそういった違いがありますので注意してください。