iDeCoの拠出金は、すべて所得控除となるため、所得税と住民税の節税効果があります。
つまり、支払うべき所得税と住民税が減ります。
一方、住宅ローン減税制度を利用されている方は所得税と住民税が控除されますので、両者を併用することで所得税や住民税の節税効果や控除額が減り、損をするのではないかと思われるかもしれません。
今回はiDeCOへの拠出と住宅ローン減税制度を併用すると、本当に損になるのかを検証していきます。
iDeCOと住宅ローン減税を併用するとどうなるのか
結論から言えば、住宅ローン減税を納税者の所得に応じた限度額ギリギリまで利用している場合は、iDeCoに加入することによってその住宅ローン減税限度額が下がってしまうことがあります。
その理由を説明していきたいと思います。
住宅ローン減税とiDeCo拠出を併用する方を、年収が500万円で独身男性の方だと仮定します。
住宅ローン減税の上限は、所得税額+(課税所得の7%または136,500円低い方)の合計金額になります。
iDeCoに拠出をしていなければ、詳しい計算は省きますが、この方の課税所得は2,330,000円であり、住宅ローン控除上限額は所得税135,500円+(課税所得2,330,000円の7%または136,500万円の低い方)の合計となります。
この方の場合は、iDeCoに加入していなければ、135,500円と136,500円の合計272,000円が住宅ローン控除上限額となります。
住宅ローン控除の控除は税額控除と呼ばれ、税金の全ての計算を終えた後に上記の控除額が差し引かれます。つまり、年収500万円に対して、所得税と住民税が計算され、その後で上記の控除額が差し引かれます。
一方iDeCoは所得控除と呼ばれ、税金を計算する元となる金額(課税所得)から、iDeCoの拠出金が差し引かれます。
もしこの方が毎月2万円iDeCoに拠出していたとすると、iDeCoの拠出金額年間24万円が所得から先に控除され、税金の計算が行われます。
年収500万円独身の方の課税所得は2,330,000円であり、この金額から24万円を引かれた金額を基に税金(所得税と住民税)が計算されます。
詳細な計算は省きますが、所得税と住民税を合わせて48,000円を節税することができます。
この時、所得税は135,500円から111,500円へと24,000円減税されています(ですので住民税の減税額も48,000-24,000=24,000円です)。
さて、ここで住宅ローン控除の限度額について考えてみましょう。
住宅ローン控除の限度額は所得税額+(課税所得の7%または136,500円低い方)の合計金額でした。
iDeCoへの加入で所得税額が24,000円減っていますので、当然住宅ローン減税の限度額も減ってしまいます。
計算すると、住宅ローン減税の限度額は所得税111,500円+(課税所得214,000円の7%または13.65万円の低い方)の合計となり、111,500+136,500円=248,000円が住宅ローン減税上限額となります。
つまり、iDeCo加入と住宅ローン減税を併用すると、iDeCoによる48,000円の減税効果は得られますが、所得税が減った分だけ住宅ローン控除上限額が減ることとなりました。
iDeCOと住宅ローン減税を併用すると損をする人
もしこの方が住宅ローン減税を上限または上限近くまで活用するようなローンの組み方をしている場合、具体的には24,800,000円以上の住宅ローンを年末の段階で残している場合、住宅ローン減税できる額が減ると言う結果になります。
一方、この方が24,800,000円以下の住宅ローンを年末の段階で残している場合には、iDeCo加入の影響は受けないと言うことになります。
iDeCOと住宅ローン減税の併用まとめ
今回のケースに限らず、iDeCoへの拠出と住宅ローン減税が競合するのは所得税においてのみです。
所得税が節税できた分だけ、住宅ローン減税の上限が減るということになります。住民税の減税分に関してはiDeCoも住宅ローン減税も気にすることはありません。
もしも住宅ローン減税を先に受けていて、iDeCoへの加入を迷っている場合は、「住宅ローンの枠を目いっぱい近く使っている場合はiDeCoの所得税節税効果は得られない場合がある」ということだけ考慮していただけたらと思います。
また、条件を設定して住宅ローン控除限度額を知りたい方は下の記事にて、限度額を計算するためのツールを配布しておりますのでご利用ください。