この記事では日本の上場投資信託である1557 (SPDR S&P500 ETF)が買いに値するか、配当(分配金)や為替、ランニングコスト等を考察していきます。
また、同じS&P500をベンチマークとする日本のETF、海外ETFなどを紹介していきます。
Contents
1557 ETF SPDR S&P500 ETFとは
1557( ETF SPDR S&P500)とは、米国を代表する株価指数であるS&P500指数との連動を目指すETF(上場投資信託)です。
S&P500指数は米国市場に上場している代表的な500銘柄の株価を基に算出されますので、1557( ETF SPDR S&P500)へ投資することは間接的に、米国市場へ投資することと同じ意味を持つことになります。
ETFとかSPDRってなにさ?
ここで1557( ETF SPDR S&P500)という何やら小難しい名前について解説をしておきます。
ETFとは、Exchange Traded Fundの頭文字をとったもので日本語に訳すと上場投資信託です。我々投資家が資金を提供し、その資金を元に会社が運用するのが投資信託。そして市場に上場している株式と同じような方法で売買できるので、上場投資信託と言われています。
SPDRとはスパイダーズ(Spiders)の略ですね。スパイダーズってなんだよ?と思われる方もいると思いますので、簡単に説明しておきます。
アメリカに本社を置く、ステート・ストリートという金融会社があり、そのグループ会社にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズがあります。
そのステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが運用するETFのブランド名がSPDR(スパイダーズ)です。ブランド名ですので、他にもSPDRダウ工業平均や、SPDR米国高配当株式ETFなど、この会社は様々なETFを米国市場へ上場させているわけです。
SPDR S&P500に莫大な資金が集まる
そのSPDRブランドの中でも最も多くの資金を集めているのが、SPDR S&P500です。その資金は277.5億ドル。日本円に換算すると約30兆円と、世界最大級のETFなわけです。
その投資信託を日本の市場でも取引できるようにしたのが1557 ETF SPDR S&P500なわけですね。
さらなる詳しい情報が欲しい方は、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ日本法人の公式HPがありますので、そちからをご覧ください。
1557(SPDR S&P500 ETF)の主要組み入れ銘柄
前置きが長くなってしまいましたが、要は米国の株価指数S&P500に投資できるETFということになります。
S&P500は、その名前が表すとおり米国に上場している主要銘柄から500社が選ばれ、それを加重平均した指数です。
2020年1月現在の主要組み入れ銘柄は次のようになっています。
マイクロソフト | 4.62% |
アップル | 4.84% |
amazon | 2.85% |
FACE BOOK | 1.92% |
バークシャー・ハサウェイ | 1.63% |
米国の個別銘柄なんてほとんど知らない私でも知っている会社ばかりです。ちなみにバークシャー・ハサウェイはウォーレン・バフェットが最高責任者の機関投資会社です。
1557(SPDR S&P500 ETF) 為替の影響と信託報酬
この1557 ETF SPDR S&P500ですが、S&P500に100%連動するかというとそうではなく、変動要因があります。
それは為替と信託報酬です。
信託報酬は安い
信託報酬とは、我々が1年間にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズへ支払うお金です。運用してもらうための報酬ですね。
この費用が年間、総資産の0.0945%となっています。
例えば1557を100万円分所有していれば、年間で1,000円ですね。この金額は日々の基準価額から差し引かれていくことになります。
この信託報酬が高いのか安いのかで言えば、とても安いと言えます。
投資信託で1%を超えるような信託報酬を設定している(ゴミのような)金融機関もありますので、そうした金融商品と比較すると格安です。
為替の影響
もう1点の変動要因は為替です。
1557の購入は日本円で行いますが、実際にはドル建てで購入しているのと同じ値動きをします。
つまり円高になれば基準価額は下がりますし、円安になれば上がります。
近年、米国市場が急落した時は安全資産である円に資金が流れ込み、円高になるケースが殆どです。つまり、市場の暴落時にはベンチマークであるS&P500が下がるのに加えて為替も基準価額を下げる方向へ働く(円高になる)ため、1557の基準価額は大きく下へ変動することになります(後述)。
1557 ETF SPDR S&P500の配当金(分配金)
1557(SPDR S&P500 ETF)には嬉しい配当(分配金)があります。
株式投資をされている方はこの配当(分配金)を目当ての一つとして投資されている方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
配当(分配金)はいつ、年何回貰えるのか?
配当(分配金)は年間4回あり、1557の権利落日は毎年3月、6月、9月、12月の第三金曜日です。当該日が営業日でない場合は権利落日は直前の営業日となります。ですので配当(分配金)が一刻も早く欲しいという方は、権利落日までに投資されることをオススメします。
つぎに配当(分配金)がいつ手元に届くのかですが、それぞれの権利落日に対して5月末、8月末、11月末、2月末に配当金が手元に入ります。
例えば3月の第三金曜日に所有していた1557に対する配当金は、5月末頃に手元に届きます。
私はGMOクリック証券とマネックス証券で1557へ投資していますが、3月権利の配当金の場合、前者は指定口座への振り込みが5月末にあり、後者は(口座振り込み不可だったので)6月頭に振替払出証明書が郵送されてきました。
2019/12/02 追記
2019年9月第三金曜日に権利を得た配当(分配金)ですが、口座への振り込みは11月29日(金)、配当金領収書は12月2日(月)に到着しました。
2019年11月30日と12月1日は土曜日と日曜日でしたが、配当金は11月月に振り込みが完了していました。
配当金領収書は日曜日に郵便業務が行われていないため、月曜日着になったものと思われます。
配当金(分配金)はいくら貰えるのか?
ではその配当金(分配金)はいくらもらえるのでしょうか?
ざっくりと言ってしまえばこの1557(ETF SPDR S&P500)の配当金(分配金)は基準価額のの約2%です。
S&P500に採用されている銘柄の業績が上がれば配当金も上がりますが、当然1557の基準価額も上がりますので、結局は約2%に収束していきます。
もちろん銘柄の基準価額が2倍になってくれれば、投資金額に対する配当利回りは倍の4%ということになります。長期投資で上手く資産が増加すれば、それだけ配当金(分配金)も多くもらえるようになってきます。
過去の配当金(分配金)はステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの公式HPより見られますが、直近の分配金(分配金)の表を貼らせていただきます。
配当金(分配金)には税金がかかる
ここで私が受け取った分配金計算書を見てみましょう。
注目していただきたいのは税金です。
海外ETFの場合は現地でまず課税されます。1557は米国の金融商品を購入していることになりますので、米国で配当金に対して10%の税金が徴収されます。その後さらに日本の税金が所得税15.315%、住民税5%がかかるのです。
具体的に計算してみましょう。
100万円分の1557を購入し、年間2%の配当金(分配金)が手に入ると仮定すると、具体的に税金はいくらになるのでしょうか?
14,343円ですね。つまり1557に投資して手元に残る配当額(分配金)は基準価額×所有枚数の1.43%程度です。
しかしこれでは二重課税になっていますので、実は確定申告することで米国での課税分は戻ってきます。
1557(SPDR S&P500 ETF)のデメリットは?
ランニングコストや配当金(分配金)などを見てきましたが、何よりも肝心なのは「この銘柄は上がるの?」という疑問ですよね。見ていきましょう。
1557の過去の値動き
まずは過去10年間の1557の価格推移を見ていきます。1557が日本に上場したのは2011年3月24日ですので、この基準価額推移が取得でき得る最長のものです。
上場以来の値動きは次の通りです。上場以来、確実に基準価額を上げ、1万円だった基準価額は、3.6倍の3万6千円になっています。
しかしここで留意しなければいけないのは1557がリーマンショック後に設定されたETFだということ。しかし取得できるデータは上記のものが最長です。これより長期データはないものか・・?
まずは1557のベンチマークとなっているS&P500の価格推移を見ていきましょう。
米国のyahoo financeからは過去69年のデータが抽出可能ですので、それを抽出しグラフにしてみました。
右肩上がりの上昇がみられます。年利(複利)を計算すると約7.7%です。1950年に16.66ドルだった価格は2020年1月には3,295ドルへ、197倍に成長しています。
しかし喜んでばかりもいられません。1557は為替の影響を受けます。これを計算しないといけません。
為替のデータが1971年からしか取得できなかったので、1971年から計算すると、次のようなグラフになります。
為替データはブリティッシュコロンビア大学のページから抽出しました。
過去48年の複利計算をすると4.6%。ベンチマークであるS&P500と比較すれば残念な利回りとなっています。
これは1971年1月には357.73円であったドルが、2020年1月には110円になるという超円高が原因です。円高の主な要因は1985年のプラザ合意ですね。
その後1993年の6月に為替は106円になっており、その後円安や円高に振れはしたものの、結果的に27年後の現在の為替とほぼ変わりがない水準となっています。
何にせよ今後の為替の値動きによって、ベンチマークであるS&P500よりも高くまたは低く上振れすることは留意しないといけないでしょう。
リーマンショックで何が起こっていたか?
先ほども申し上げましたが、このETFが日本に上場したのは2011年3月24日のことでしたので、リーマンショックを経験していません。
もしもリーマンショック前にこのETFが設定されていたならば、リーマンショックによる米国株の暴落と、安全資産たる日本に資金が流入することによる円高、この二つの相乗効果で一体基準価額は何%下がったのかを検証します。
結論だけ言うと
2007年7月5日のピークから、2009年3月5日のボトムまで、暴落率は64.16%です。
恐ろしい。
100万円が36万円に。
酷い。
今後リーマンショック級が来かどうかなんて誰にもわかりようがありませんが、このようなことが起こり得るということは頭に入れて投資を行う必要があります。
1557(SPDR S&P500 ETF)は出来高が少ない
1557のもう一つのデメリットとして、出来高が少ないという事があげられます。
次の図はこの記事を書いている時点における過去1か月の出来高です。
少ない時は出来高が1056しかありません。1056ということは1日の売買代金が3千万円程度ということです。
購入額が10万程度であれば問題ないのでしょうが、100万円以上の買いを入れるとそれだけで基準価額に影響を与えることがあり、高値でETFを購入してしまう可能性もあります。
また貯めていた建玉を、急用で売却する必要がある際には一気に売り注文を入れてしまうと、これまた安値で売却してしまうことになるでしょう。
1557(SPDR S&P500 ETF)に類似した投資先
1557と同様、S&P500をベンチマークとした投資先がいくつかあるので紹介したいと思います。
S&P500をベンチマークとする日本に上場しているETF
銘柄名 | 証券コード | 信託報酬 | 純資産(百万円) |
上場インデックスファンド米国株式(S&P500) | 1547 | 0.15%~0.25% | 7302 |
iシェアーズ S&P500 米国株 ETF | 1655 | 0.15%~0.1875% | 3870 |
上場 インデックスファンド米国株式(S&P500)H有 | 2521 | 0.162%~0.262% | 6863 |
SPDR S&P500 ETF | 1557 | 0.0945 | 不明 |
S&P500をベンチマークにしている日本の上場ETFは1557を含めて4本です。
1557は流動性(出来高)が低いと言いましたが、他の銘柄は一層流動性が低いので百万単位以上で投資をされている方には不向きな銘柄です。
個人的に2521は為替ヘッジ(為替の変動を受けないような対策)がされているので、こちらは購入を考えても良いと思います。2019年8月現在、米国の政策金利は約2%であり、日本の金利政策金利はほぼ0です。
個人で為替ヘッジを行おうとすると2%のコストがかかりますので、本当にこの銘柄に為替ヘッジがかかっているなら興味深いと思います。
しかしながら1547と2521は運用会社が日興証券なのですが、信託報酬以外にも謎の諸費用が乗せられているので、そういった不透明なことする会社のETFは購入したくありませんが。
S&P500をベンチマークとする、米国に上場しているETF
S&P500は米国の主要500銘柄を厳選した上場投資信託ですので、当然本場アメリカにもそれをベンチマークとしたETFが上場しています。
日本に上場しているのは表の一番下、SPDRS S&P500 ETFのみですが、海外にはより信託報酬の低い銘柄があります。
銘柄名 | ティッカーコード | 信託報酬 | 純資産 |
iシェアーズ・コアS&P500 ETF | IVV | 0.04% | 182.09億ドル |
バンガード・S&P500 ETF | VOO | 0.03% | 491.9億ドル |
SPDRS S&P500 ETF | SPY | 0.09% | 277.5億ドル |
これらのETFを購入すれば、流動性の問題はクリアされます。何しろ取引量が日本とは大違いです。
そしてIVVとVOOを購入すれば、信託報酬が低いのでランニングコストが抑えられます・・が少し落とし穴もあります。
海外ETFを購入できる証券会社
日本で海外のETFを購入できる証券会社は3社あります。
現在私が口座を解説しているのは楽天証券・SBI証券・マネックス証券・GMOクリック証券ですが、昔から利用している証券会社がマネックス証券だったので、現在も海外ETFの購入はマネックス証券を利用しています。
各社驚くほど横並びの諸費用を確認してみましょう(令和2年1月現在)。
証券会社 | 売買手数料 | 為替手数料 |
マネックス証券 | 約定代金の0.45%(最大20ドル) | 25銭 |
SBI証券 | 同上 | 25銭(裏技あり) |
楽天証券 | 同上 | 25銭 |
キャンペーンで為替手数料0円だったり、SBI証券は裏技で為替手数料を数銭にしたりできますが、基本的には各社変わりありません。
海外ETFを購入すればランニングコストを抑えられるのか?
海外ETFを売買するには、
- 日本円をドルに両替する(0.25%の手数料が必要)
- ドルでETFを購入する(0.45%の手数料が必要)
上記のように購入時は合計0.7%必要となります。そして利益確定をする時は
- ETFを売却する(0.45%の手数料が必要)
- 売却して得たドルを日本円に両替する(0.25%の為替手数料が必要)
となり売却時も同じく合計0.7%必要となります。
売買で合計1.4%の費用がかかることとなりますね。
証券会社で1557を取引するには片道0.1%程度の手数料が発生し、売買するには0.1×2=0.2%が必要となります。
この1.4%と0.2%の差を信託報酬で縮めていくわけですが、信託報酬が0.09%から0.03%と0.06%下がったところで、単純計算するとペイするのに20年かかってしまいます。
20年は長すぎる。
そして最終的に日本で生涯を終えるなど日本円に両替することが将来必須の場合は、ドルに両替してドルでETFを購入しても、為替差益(損)は避けられなくなります。
1557(SPDR S&P500 ETF)は買いなのか
1557(SPDR S&P500 ETF)について見てきました。
1557のベンチマークとなるS&P500は、米国を代表する500銘柄で構成されている指標です。
過去の利回りは複利で8%近くあります。複利8%ということは、10年で2倍以上になる計算です。米国は世界経済第一位の国ですのでこれらかも力強い成長を遂げることが予測できます。
しかしながら1557の留意点として
- 流動性が低い
- 暴落時に為替による影響を受けて、過去には6割を超える下落をしたことがある。
- プラザ合意での円高により、利回りは過去48年間で複利4.6%である
の3点があげられます。
流動性の問題は海外ETFを購入することで解消されますが、為替の影響は海外ETFでも受けることとなります。
またコスト面で考えると、超長期投資(20年以上)であれば海外ETFに軍配が上がりますが、そうでなければ1557を購入する方が得になります。
暴落時に安全資産である円が買われることは仕方ありませんが近年の為替は安定しており、日本経済は人口減少とともに低迷することが予想され、長期的に円高に傾くことはないと思います。
よって、1557をこれから購入していくことは強くオススメしたいと思っています。
なぜ日本ではなくアメリカの株価指数に連動するETFを購入するかは、次の記事を参照お願いします。
日本の人口減少による経済衰退は深刻だと思います。