信用取引をご存知でしょうか?
「そんなの知ってるよ、所持金より多くの株を買えることできるやつでしょ?」
という声が聞こえてきます。私も信用取引の口座を開設して、以前取引をしていたことがありましたが、今は信用取引は行っていません。
これは、別に信用取引で大損したからというわけではなく、異なる方法でレバレッジをかけて投資をしているからです。
基本的に長期投資には向かないと思われる信用取引ですが、長期投資を行うメリットもありますので、信用取引の概要とメリットを説明していきたいと思います。
信用取引の概要
信用取引とは、証券会社に一定額の保証金を預けることにより、自分の資金(保証金)以上の取引ができる制度のことです。
分かりやすく言えば、担保を入れて銀行からお金を借りるイメージですね。
例えば住宅ローンは、購入する(戸建であれば)土地と建物を担保にすることによって、低い金利で数千万円のお金を借りることができます。
住宅ローンで購入した家は収益を生みませんが、例えば不動産投資の場合、ローンを組みお金を借りることによって、少ない資金で多くの収益を得るということが可能になります。
株式投資も同様に、限られた現金しか保有していなくてもその現金を保証金とすることによって、その保証金の3倍程度の現金を借りて取引を行うことが可能になります。
信用取引の保証金とリスク
しかしながら、信用取引も住宅ローンと同じ借入金です。
住宅ローンの場合は返済金が滞れば、最終的に土地と家は売却されてしまいます。信用取引も同様で、証券会社によって「証拠金維持率」が定められており、取引を行う途中で損失を出すなどの理由により「証拠金維持率」を維持できなくなってしまうと所有している取引は強制決済されてしまいます。
証拠金維持率は例えばGMOくりっく証券の場合、委託保証金30%、最低保証金維持率は25%となっています。
委託保証金を噛み砕いて説明すれば、最初に300万円を保証金として預ければ、1000万円までの投資が可能ということです(300/1000=30%)
そして、最低保証金維持率が25%ですので、1000万円の投資に対して250万円までの保証金を維持する必要があります。
例えば、1000万円で購入した株が50万円値下がり、950万円になったとしましょう。
この時保証金は(300万円-50万円)と計算され250万円であるとみなされます(保証金維持率は250/1000=25%)。
つまり、これ以上株価が下がってしまった場合は最低保証金維持率が25%を下回ることとなります。
その場合は、最低保証金維持率をキープできる金額になるまで強制的に株が売却されてしまいます。
また最大のリスクとして、仮に強制的な株の売買がストップ安等の理由により出来なくなってしまい、証拠金維持率が0%未満になった場合、あなたは借金を背負うことになります。
これが「信用取引は怖い」と言われる所以です。
信用取引には一般信用取引と制度信用取引がある
信用取引には一般信用取引と制度信用取引の2種類があります。
制度信用取引
制度信用取引とは、取引できる銘柄や返済期限などが取引所規則により決められている取引です。信用取引の返済期限も6カ月以内と決められています。つまり、購入した株式は半年以内に売却する必要があります。
また、取引できる銘柄が限られていることから、その銘柄に対する信用は高く、結果として一般信用取引よりも金利は低くなっています。
一般信用取引
一般信用取引とは証券会社独自に返済期限等について自由に取り決めができる制度です。
制度信用取引で規制されている銘柄よりも多くの種類の銘柄を取引でき、返済期限も無期限であることが多いです。しかしながら、制度信用取引よりも信用性の低い銘柄も信用取引できることから、金利は高くなります。
信用取引にかかる費用
信用取引に係る費用は大きくわけて2種類あります。
1つは売買する時にかかる手数料、もうひとつは金利です。
売買手数料は信用取引で無くても、株式取引を売買するときにもかかる費用ですね。例えばGMOくりっく証券だと、50万円を超える取引に対して259円の売買手数料がかかります。
しかし金利とは・・・?何なのでしょうか?
信用取引は保証金を担保とし、それと引き換えにお金を借りて株を購入することになります。つまりお金を証券会社から借りていることになるので、借入金の金利がかかってくるのです。
2018年11月現在ですと、各証券会社によってバラつきがありますが、年利で2~3%程度の金利がかかる証券会社が多いです。
信用取引の金利は借入額のみにかかる
信用取引に関わらず、レバレッジをかけて取引するには、コストがかかってしまうことは仕方の無いことです。
たとえばレバレッジETFの場合は、0.5~1%程度の信託報酬がかかる銘柄が多いです。レバレッジETFは減価があるので、純粋に長期投資でレバレッジ通りの収益があげられるとは限りませんが、信用取引に比べるとコストは低いように感じられるかも知れません。
しかしんがら、信用取引では、あくまで借り入れを行った金額に対して金利がかかるという特徴があります。
例えば、信用取引で1000万円を借り入れ購入した株が2倍になったとしましょう。1000万円が2倍になり、2000万円。
たとえばレバレッジETFの場合、同様に株が2倍になった時は2000万円に対して信託報酬が計算されます。
しかしながら、信用取引の場合は最初に投資した1000万円に対して金利がかけられます。つまりは、いくら株価があがり資産が増えようが、信用取引の金利は借入額にのみかかるのです。
これは当然です。何故ならば、不動産投資にせよ事業投資にせよ、金利は借り入れた金額にのみかかるものだからです。
会社の規模が大きくなって資産性が向上しても、それに対して金利がかかるわけではありません。信用取引も原理は同じです。
信用取引の金利を活かした投資方法
この「金利がかかるのは借入金に対してのみ」という特性を利用できるのが、米国株インデックス投資の長期レバレッジです。
短期的に見れば暴落もありましたが、米国株インデックス投資は長期にわたり右肩上がりを続けています。
米国株の代表的なインデックスであるS&Pの過去30年の年利を計算すると、配当込みで約10%もあり、約10年で倍、20年で4倍になる計算です。
一般無制限信用取引を金利3%で行ったとしましょう。
20年後には3%の金利が1/4になりますので、そこまで保有し続けることができるのであれば、減価のあるレバレッジETFより経費のかからない優れた投資方法になるでしょう。
しかしながら、初年度に2~3%の金利がかかってしまうことはスタートダッシュが大幅に遅れてしまうことになります。
そしてもちろん、株価が購入価格よりも下がってしまった場合でも、借入金額に対する金利を支払わなければならないので、評価額は下がるわ、金利の支払いも高いという二重苦にもなり得ます(評価額が下がってしまった場合は、一旦売却して再度購入するという方法もありますが)。
本当に長期投資を20年以上続けられる、その資金と自信がある、という方にはオススメの投資方法と言えるでしょう。