今回はiDeCo(イデコ)を行うことによって得られるメリットのうち、所得税と住民税の節税効果についてお話をいたします。
毎月掛け金を拠出して、運用していくのがiDeCo(イデコ)です。しかしそれなら投資信託や株式と同じじゃないかと思われるかもしれません。
株式、投資信託とどのように違うのか、なぜ節税(すなわち控除)をできるような仕組みになっているのかを解説します。
iDeCo(イデコ)の節税(控除)の仕組みと計算方法
iDeCo(イデコ)には節税効果がある、ということを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
まずはその節税効果(控除の効果)が、どのような仕組みになっているのかを説明していきたいと思います。
iDeCo(イデコ)3つの税制上メリット
iDeCo(イデコ)で拠出金を運用した時の税制上のメリットは下記の3つになります。
- 所得税・住民税の節税(控除)
- 運用利益を確定した時の税制優遇
- 運用資産受け取り時の税制優遇
今回は3つのメリットのうち、「所得税・住民税の節税(控除)」に焦点をあてて話を進めていきたいと思います。のこる2つのメリットについては以下の記事を参照お願いします。
iDeCo(イデコ)の節税(控除)と所得税・住民税の計算方法
iDeCo(イデコ)は掛け金が全額所得控除の対象になるため、課税所得が下がり、所得税と住民税が節税できる・・ と書いてしまえば簡単ですが、税金の仕組みをご存知ではない方は良く分からないと思います。
ですので、まずは簡単に所得税・住民税の計算方法を説明したいと思います。
なお、さらに詳しい所得税・住民税の計算方法については
を参照お願いします。
ここでは、簡易的にサラリーマン・フリーランス所得税・住民税の計算を記載します。
- サラリーマンの所得税=(給与所得ー給与所得控除ー所得控除)× 所得税率
- サラリーマンの住民税=(給与所得ー給与所得控除ー所得控除)× 住民税率+住民税均等割
- フリーランスの所得税= (課税所得金額ー所得控除)× 所得税率
- フリーランスの住民税=(課税所得金額ー所得控除)× 住民税率+住民税均等割
給与からいくつか控除がされ、そこに所得税率・住民税率がかけられていますね。
iDeCo(イデコ)で節税がどのくらいの額になるのか、実際に計算
iDeCO(イデコ)の拠出金はすべて「所得控除」になります。上の計算式を見ると、全ての式で、「所得控除」を引いたものに税率がかけられていますよね。
拠出金が所得控除にあたるということは、つまり(拠出金×税率)分だけ税金が安くなるということになります。
例えば、月額2万円をiDeCo(イデコ)に拠出している独身のサラリーマン(年収500万円)の方だと、年間で24万円(2万円×12カ月)の所得控除が増えます。
年収500万円だと所得税率と住民税率はともに10%になりますので、所得税2.4万円と住民税2.4万円、合計4.8万円の節税になります。(控除額24万円×所得税率10% +控除額24万円×住民税所得割率10%)
同様に月額2万円をiDeCO(イデコ)に拠出しているフリーランスの方だと、iDeCO(イデコ)の拠出金控除後の課税所得金額が195万円~330万円の範囲内の場合、所得税と住民税の税率が10%になるため、サラリーマンと同じく所得税と住民税合わせて4.8万円の節税が出来ます。
単年に限って言えば、年間24万円を拠出することによって、4.8万円の節税ができることになります。諸経費を考慮しなければ利回りで20%ですね。
これが「iDeCoは(イデコ)凄い」と言われる1つの理由です。
加えて言うならば、月額2万円をiDeCo(イデコ)に拠出しているフリーランスの方で、iDeCo(イデコ)の拠出金控除後の課税所得金額が330万円~695万円の範囲内の場合、所得税率が20%となるため、所得税4.8万円と住民税2.4万円の合計7.2万円の節税が可能になります。
利回りで言うならば、30%
プロの投資家でも難しい数字です。
所得税・住民税の複数年でのiDeCo(イデコ)節税効果
ここまで聞けば「iDeCo(イデコ)凄い、絶対やらなきゃ損」という話になるのですが、しかしながらiDeCo(イデコ)は年金です。20歳の時に始めたなら、60歳まで積み立てを続けることを前提としています。
では、40年後にこの節税の効果はどうなっているのでしょうか?
計算上運用利回りが0%で、所得税住民税の計算方法が現在と変化しないものとして計算してみます。
月額2万円をiDeCo(イデコ)に拠出している独身のサラリーマン(年収500万円)の方の積み立てがとうとう40年目に突入しました。あっという間でしたね笑長い間お疲れ様でした。
ここまで積み立てた金額は
2万円×12万円×40年=960万円
そしてこの年も積み立てを行い、4.8万円を節税しました。ここまで節税した金額は4.8×40=192万円です。
960万円の積み立てに対して192万円の節税ですので、利回りは20%のように見えますが40年が経過しています。
これは年間利回り(複利)で計算すると、概ね0.9%くらいの数字になります。
言い換えれば、
iDeCo(イデコ)を月2万ずつ積み立てて所得税・住民税の節税(控除)した場合、月2万円ずつ積み立てて毎年0.9%で複利運用した場合の利益に等しい。
どうでしょう?少し夢から現実に戻された気分ですね。控除の効果は複利1%に満たないわけですから。
iDeCo(イデコ)に係る経費を加味して節税を再計算
さらに加えて、iDeCo(イデコ)は運用経費のかかる年金でした。
口座管理手数料が毎月167円+信託報酬がかかります。
口座管理手数料を40年間分計算すると、
167×12×40=80,160円
となり、8万円程度かかります。
あとは信託報酬ですが、定期預金などに預けて運用することも可能で、その場合は信託報酬は0円です。
一方、信託報酬が年間1%の商品を40年運用した場合、信託報酬は総計190万円ほどかかり、所得税住民税の節税額(控除の効果)だけでは赤字になります。
つまり、信託報酬が高い商品に関してはそれなりにリターンを得ないと割に合わないということになります。
iDeCo(イデコ)の節税金額はいつ戻ってくるの?
iDeCoの節税金額がいつ戻ってくるのか、気になるところですよね?
会社員/サラリーマンと個人事業主/サラリーマンで、節税額の取り扱いは異なりますので、それぞれ解説していきますね。
会社員・サラリーマンの場合
会社員・サラリーマンの場合は年末調整の時にiDeCoの年間拠出金額を記入することで、控除額は確定し、申請は終わります。
所得税の還付は会社によってことなりますが、12月または1月の給与と一緒に還付するところが多いようです。
住民税の還付は翌年になります。
ただ、住民税に関しては還付という表現が正しくはありません。というのも、住民税は前年度の所得に対しての支払いを今年度行うからです。
つまり、前年度iDeCoで所得を減らした分(控除を増やした分)、今年度の住民税が安くなるという仕組みになっているのです。
個人事業主・フリーランスの場合
個人事業主・フリーランスの場合は、確定申告で1年間のiDeCo(イデコ)拠出金額を申告することでその額が控除され、所得税と住民税の金額が確定します。
確定申告終了後すぐに所得税の支払い、6月くらいに住民税の通知書が届くと思いますが、その時の金額はiDeCoの節税額が計算された数字になっています。
iDeCo(イデコ)の節税はどれだけ効果があるのか改めて考察
現在銀行の普通預金の利回りは0.1%もないわけですから、iDeCo(イデコ)に加入して運用を定期預金だけにしたとしてもそれなりの利回り(0.9%程度)が出るのは美味しいと言えるでしょう。
私が「iDeCoの節税効果(控除の効果)はどうなの?」ときかれたら
「複利0.9%で回せるから、リスク無しで得られる金利としては高いよ」と答えたいと思います。
ただし、「iDeCo(イデコ) 節税 利回り」で検索するとと出てくる、「利回り20~30%」という説明はあくまで単年だけの話であり、間違っているのだということをお伝えしたいです。