iDeCo(イデコ)を分割受け取りする場合の税金の話をさせていただきます。
一括受け取りを選択すると、多額の課税を徴収される。一括受け取りすると、すぐ使ってしまいそうで怖い。などの理由で分割受け取りを選択される方もいらっしゃるでしょう。
分割受け取りするとその税金はいくら払わなければならないのか、またその計算式はどのようになっているのかを説明していきます。
iDeCo(イデコ)を分割受け取りした場合、税金はどのように計算されるのか
iDeCo(イデコ)を分割受け取りした場合、税金はどのように計算されるのでしょう?
iDeCo(イデコ)を一括受け取りした場合は、退職所得とみなされ(会社員の場合は)、節税のためには退職金との兼ね合いが非常に重要でした。
一方、iDeCo(イデコ)を分割受け取りした場合、その受給額は老齢年金として取り扱われます。
老齢年金とは、厚生年金や国民年金に代表される年金のことです。つまり、iDeCo(イデコ)を受け取ると厚生年金や国民年金など他の年金と合算して税金が課せられてしまいます。
さらに悲しいことに老齢年金は「雑所得」に分類され、他の収入と合算して計算をする必要があるので、分離課税である一括受け取りに比べると税制上不利な扱いになってしまいます。
日本は累進課税制度が採用されており、他の収入と合算されることにより税率が上がるリスクを取ることになるからです。
iDeCo(イデコ)を分割受け取り(老齢年金で受け取り)する場合の受け取り期間と金額
できるだけ支払う税金を少なくしようとすると、まずはiDeCo(イデコ)の受給額を計算しないといけません。
iDeCo(イデコ)をどのような方法で分割受け取りできるかは、選択した運営管理機関によって異なります。
楽天証券を例にあげると、
- 受け取り期間は5年以上20年以下の期間から、1年刻みで選択
- 年間支給回数は1,2,3,4,6,12回のうちから選択
受け取り金額は、選択した支給回数分の1を、支給月の前月末時点での個人別管理資産額に応じて算出し、支給されます。
例えば、
受け取り期間5年で年間支給回数を4回にした場合、支給回数は5×4=20回です。1回目支給時の前月末時点での運用資産が600万であったとき、600万÷20=30万円が1回目に支給されます。
次に、2回目支給時の前月末時点での運用資産は、運用損益に変化がなければ600万-30万=570万円ですので、570÷19=30万円が2回目に支給されます。
しかしならがiDeCo(イデコ)は受け取りが完了しない限り、70歳になるまで運用が続きますので、1回目支給時から2回目支給時の前月末の間に損益・損失が生じた場合は、2回目の支給金額に増減が生じることになります。
老齢年金の所得金額と税金
iDeCo(イデコ)を分割受け取りしたとき(老齢年金にしたとき)は、受け取った額がそのまま雑所得となるわけではありません。
下記の式と表に従って雑所得金額が計算されます(税制優遇があります)。
公的年金等に係る雑所得の金額=(a)×(b)-(c)
年金を受け取る人の年齢 | (a)公的年金等の収入金額の合計額 | (b)割合 | (c)控除額 |
---|---|---|---|
65歳未満 | (公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額はゼロとなります。) | ||
700,001円から1,299,999円まで | 100% | 700,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 | |
65歳以上 | (公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は、所得金額はゼロとなります。) | ||
1,200,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,200,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
65歳未満と65歳以上で計算方法が異なっているのがおわかりいただけるかと思います。
これは何故でしょうか・・?
65歳で収入が変わることが見込まれるからですね。それは「厚生年金・国民年金」です。65歳からはこれらの公的年金が支給される(支給年齢を繰り上げ・先延ばしすることもできますが)ので、65歳以上で控除できる金額が大きくなっているのです。
では、具体的に計算を行い、雑所得がいくらになるのかを見てみましょう。
65歳以上で、年金受給総額が200万円だった時の雑所得
例えば、65歳の時にiDeCo(イデコ)を分割受け取りにして、他の年金と合わせて年額200万円を受け取った場合の計算は、
上の表で「65歳以上、1,300,000円から4,099,999円まで」に該当しますので、
2,000,000×100%-1,200,000=800,000円
が雑所得となります。
これを他の所得と合算させて、所得税・住民税が計算されますが、もし他の所得が全く無かった場合、
所得税は
(800,000-380,000)×0.05=21,000円
住民税は
(800,000-330,000)×0.1=47,000円 プラス住民税均等割(額が小さいので割愛します)
となります。
詳しい計算は
年間所得税の計算方法をご参照お願いします。
iDeCo(イデコ)を分割受け取りすると、税金だけでなく社会保険料も増える
上で説明したように、iDeCo(イデコ)を分割受け取りをすることにより雑所得が増え、所得税・住民税が増えることがわかりました。
しかしながら、負担が増えるのは所得税・住民税だけではありません。
国民健康保険料も増えるのです(一括受け取りの場合は国民年金保険料は増えません)。
iDeCo(イデコ)の加入期間が終了し、分割受け取りを年間で100万円受給した場合(年金を100万円追加で受け取った場合)、国民健康保険料はいくら増えるのでしょうか?
国民健康保険料は市町村により異なりますので、例えば大阪市だと
100万円×(8.19%+2.99%+2.69%)=13.87万円
増えることになります。
これもiDeCo(イデコ)の分割受け取りが老齢金(雑所得)として扱われてしまうのが原因です。
iDeCo(イデコ)分割受け取り時の税額は、60歳以上の生活様式によって大きく変わる
65歳以上か未満かによって、年金の雑所得計算方法が異なるのは表をみていただければおわかりいただけたかと思います。
これは、日本のサラリーマンの生活様式として60歳で定年退職、65歳で年金支給という形を1つのモデルにしているからだと考えられます。
しかしながら、昨今の少子高齢化社会による人員不足や、年金支給額の減少および年金支給年齢の引き上げに伴い、そのようなモデルは崩壊しつつあります。60歳を超えても嘱託職員として働く方も多くなるでしょう。
また自営業の方には定年といった概念が存在しませんので、60歳を超えてもまだまだ現役の方がこれから増えて行くと思われます。
iDeCo(イデコ)を分割受け取りにした場合、老齢年金となり税制上は雑所得に該当します。
雑所得に該当するが故に、他の所得(給与所得や、自営業の場合は所得金額、不動産所得など)と合算しなければならず、税制上不利になってしまいます。
つまり、単純に年金の金額だけを考慮するのではなく、他の所得との兼ね合いも考えて受け取り方法を考えなくてはならないのです。
iDeCo(イデコ)の受け取りは、分割受け取りより一括受け取りの方が得
iDeCo(イデコ)の分割受け取りの説明をしてきましたが、一括受け取りに比べると税制上の優遇措置が小さいので、一括受け取りで課税されない範囲においては、一括受け取りで受給した方が税制上得になります。
しかしながら、例えば60歳で退職しその後65歳の年金受給まで一切収入がないような場合は、分割受け取りにしていただくことにより、雑所得が38万円(年金受給額で言えば106万程度)までは所得税は非課税、33万円まで(年金受給額で言えば94万円)は住民税は非課税となります。
このように、60歳以降働くのか、所得の有無によって「得をするiDeCo(イデコ)の受給方法」は変わります。
一括・分割それぞれの違いを確認していただき、個々人の生活スタイルに合わせた受給方法を選択するべきだと思います。