iDeCo(イデコ)を勧める証券会社・銀行はもちろんのこと、ネット上の記事を見ていてもなかなかiDeCo(イデコ)を否定する記事は出てきません。
iDeCo(イデコ)はあらゆる状況の人が盲目的に加入して良いものである、とは限らないということを説明していきたいと思います。
iDeCo(イデコ)の節税メリットは本当のことばかりではなく、嘘も多い
今回は一般的なiDeCo(イデコ)のイメージである「節税ができて運用益も非課税だし、受け取る時に税制優遇もある素晴らしい制度」という認識を覆していきたいと思います。
ちなみに私は企業型確定拠出年金に既に加入してしまっていますので、この記事を書きながらダメージを受けているということを片隅に覚えておいていただければ、少しは楽しく読めるかもしれません。
一般的なiDeCo(イデコ)のメリットとしては
- 所得税・住民税の節税効果
- 運用利益を確定した時の税制優遇
- 運用資産受け取り時の税制優遇
の3つがあります。
「iDeCo(イデコ)は節税効果だけで利回りが凄い」は嘘
iDeCo(イデコ)は所得税や住民税を計算する際の控除対象となるので、例えば年収が500万円の会社員・サラリーマンや課税所得が300万円のフリーランス・個人事業主の方だと、月2万円の拠出で、4.8万円/年間の節税効果を生み出します。
年間24万円で4.8万円の利益を生み出すわけですから、単年で見れば年利回りは20%(4.8÷20)。
日本の所得税は累進課税制度が採用されていますので、年収(所得)の多い方だとそれ以上の節税効果を生み出すこととなります。
1年でiDeCo(イデコ)の運用が終了するのであれば、それは正しいのですが、iDeCo(イデコ)の運用資金は最短で60歳になるまで引きだすことができません。
仮に20歳から60歳まで、年収500万円の方が月2万円を拠出し続けた場合はどうなるのでしょうか?結果的に、40年間をかけて960万円を積み立て、192万円を節税したことになります。
これは毎月2万円を積み立てて、年利0.89%で複利運用した場合の結果とほぼ等しくなります(税金は考慮していません)。
単年だと20%の利益を生み出すiDeCo(イデコ)ですが、積み立て年数が長いほど、節税効果を利回換算した時の数値は低くなます。
例えば、拠出年数を40歳から60歳まで20年間に変更すると、年利回り(複利)は1.6%に上昇します。これはなかなかの数値ですね。
いずれにせよ、年利回り20%!30%!という謡い文句は拠出初年度に限っての話になり、毎年節税効果が凄いというのは嘘になります。
退職金が手厚い会社で働くと、「iDeCo(イデコ)の受け取り時非課税」は嘘になることがある
先ほど述べましたが、iDeCo(イデコ)は年収500万円の会社勤めの方だと、月2万円拠出することで、年間4.8万円程度の節税を行うことができます。
これを30年間継続すると、148万円の節税になるはずですね。
退職所得控除は、例えば30年間、同一会社での勤続とiDeCo(イデコ)の拠出を同時並行すると1,500万円になる。という話をiDeCoを一括受け取りした時の税制優遇と損をしない受け取り方で説明させていただきました。
しかしながら、例えば一部上場企業に30年間勤務した場合は退職金だけで控除額の1,500万円を超えてしまうことでしょう。
iDeCO(イデコ)を一括受け取りした場合、会社から貰える退職金と同様の「退職所得」とみなされますので、この場合、iDeCo(イデコ)の受給に退職所得控除は使えなくなってしまうわけですね。つまり、受給時に税金がかかることになり、受け取り時非課税は嘘になります。
そうなるとiDeCo(イデコ)を受け取る選択肢としては
- 税金がかかっても良いから退職所得控除を使用せずに一括で受け取る
- 分割受け取りにする
のどちらかになります。iDeCo(イデコ)を分割受け取りした場合は、60歳以降の所得の有無により大きく税金が変化しますので今回は割愛します。
退職所得控除なしで税金を支払うと税金はいくらになるのか
仮にiDeCO(イデコ)を30年間月2万円積み立てをしたとすると、総額は720万円になります(運用損益は考慮してません)。
1,500万円以上の退職金と一緒にiDeCo(イデコ)一括受給すると、税率があがるため、退職金を貰った翌年に一括で受け取ることとします。その方が税金が安くなります。(「iDeCoを一括受け取りした時の税制優遇と損をしない受け取り方」参照)
所得税・住民税を計算するために、まずは退職所得を計算しますね。次の式にあてはめましょう。
(退職金収入ー退職所得控除)×50%=退職所得
今回退職所得控除は退職金で使い果たしているため、(720万円ー0)×50%=360万円が退職所得になります。
退職所得が計算できたら、所得税が計算できます。
平成30年分所得税の税額表〔求める税額=A×B-C〕
A 課税退職所得金額 | B 税率 | C 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
上の表から360万円の退職所得に係る税金を計算すると、所得税は292,500円となります。
住民税は退職所得の10%+住民税均等割で計算できますので、3,600,000×0.1=360,000円(住民税均等割は割愛)です。
所得税と住民税を合計すると、652,500円になります。720万円の積み立てに対して約65万円の税金が徴収されます。
iDeCo(イデコ)は退職所得控除が無いと税金が発生する
148万円節税したはずなのに、受け取りの段階で65万円の税金がかかってしまいました・・・。正味節税額は83万円になりました。
損はしていませんが、節税額がグっと圧縮されてしまいました。おかしくないですか?
このように、退職金制度の充実している会社に勤めている場合は、iDeCo(イデコ)の節約効果が一気に減ってしまい、受け取り時非課税というのは嘘になります。
iDeCO(イデコ)の運用益が非課税になるも嘘
「受け取り時非課税」のは違うのはわかった。でも運用した利益からは税金徴収されないんでしょ?
と思われている方。それも嘘になり得ます。先ほどは運用損益を考えずに税金の計算をしましたが、今度は運用益があった場合の計算をしてみましょう。
仮に30年間でiDeCoを上手く運用し(月2万円積み立て、年利回り6%で運用)、積立額+運用益で2,000万円になったとしましょう。
その場合、積立金額は720万円で運用益は1,280万円になります(複利運用はすげぇ)。
仮に退職金が1500万円以上ある会社にお勤めの場合、先ほど同様退職所得控除は0になります。さあ、税金を計算してみあしょうか。
(退職金収入ー退職所得控除)×50%=退職所得
上記の式にあてはめると
(2000万ー0円)×50%=1,000万円 が退職所得となります。
先ほどと同じになりますが、退職金と一緒に受け取ってしまうと多大な税金が課せられるため、節税のため退職金を貰った翌年に一括で受け取ります。
計算してみると・・・1,000万円の退職所得に係る税金は所得税1,764,000円、住民税円の合計1,000,000円になります。
受け取り時に276万円以上の税金がかかります。運用益が非課税というのも嘘なんですね。
しかし、ここにはiDeCO(イデコ)の所得税・住民税の節税効果が含まれていません。年収500万円の方が30年間で節税できる148万円を加味します。
276-148=128万円
つまり、1280万円の運用益対して約128万円の税金がかかることになりますね。ほぼ10%の課税ということになりました。
iDeCo(イデコ)の運用益は非課税ではない
株式投資・投資信託等で得た利益に対する税金は、所得税と住民税を合わせて20%です。また、株式・投資信託の税金は退職所得と同様、分離課税であるため他の所得と合算されることはありません。
通常の株式・投資信託の運用利益1280万円に対する税金は20%(復興所得税除く)の256万円です。
通常の株式・投資信託運用よりは課税額は低いと言えますが、非課税では断じてなく、iDeCo(イデコ)の運用益は非課税と言うのは嘘なのです。
iDeCo(イデコ)の節税・運用益非課税は、退職所得控除ありきの話で、退職控除が無ければ全て嘘
ここまでの話をまとめると、
退職所得控除を使い切ってしまうほど退職金が手厚い会社に長期間勤めている方、または勤める予定の方は、iDeCo(イデコ)に入るべきではないのでは?
とう話です。
節税ができる・運用益非課税と言ってよいのは、iDeCo(イデコ)の運用が終わり、受け取る時にかかる税金がゼロ、もしくはもっと優遇されている場合のみです。
退職所得控除がないような状況では、退職所得が50%にになるという税制優遇を得たとしても、流動性が高く、レバレッジの利く通常の株式・投資信託や運用益が非課税のNISAで運用した方が良いのではないでしょうか?